海外キッズの母語と継承語|母語の定義と役割について
先日の記事で、海外に住むキッズの継承語について、少しまとめてみました。
チビにとって、日本語は継承語という話になりましたが、
母語については、ちょっと曖昧にしていました。
母語ってなんでしょうか・・・?! 継承語との関係は?
今回、母語について深掘りし、母語の役割について、チビの様子と共に考えてみました!
母語とは
難しい母語の定義
日本で生まれ育った私は
私の母語は日本語!
と自信を持って言えます!
でも、オーストラリアのように移住者が多く多言語主義の国では、「母語」が何であるのか答えに困る人がたくさんいるようです。
母語という表現を使わないオーストラリア
移民が多いオーストラリアでは、母語という表現は曖昧だからか、異なる表現を質問用紙などで使っています。
チビの学校の入学申込書 (enrolment form)には、
Does Adult A speak a language other than English at home? (If more than one language is spoken at home, indicate the one that is spoken most often.)
大人Aは家で英語以外の言語を話しますか?もし2言語以上話すなら、一番よく話す方(言語)を書いてください。
- No, English only
いいえ、英語のみ
- Yes (please specify):
はい (どの言語ですか?)
Please indicate any additional languages spoken by Adult A:
大人Aが話す他の言語も書いてください
Main language spoken at home:
家で話す主な言語
Preferred language of notices:
(メールなどの)お知らせの希望する言語
などと、母語という表現ではなく、
- 英語以外の言語
- 一番よく話す言語
- 家で話す主な言語
- 希望する言語
などと、あります。
母語と使わないということは、母語の定義がちょっと曖昧で、人によって様々だからだと思います。
そもそも、「母」というのが、ちょっと定義が難しい・・・。
日本でも、父母というより、親や保護者という表現を最近は使うし、こちらでも↑で分かるように、父・母・親・保護者でもなく、Adult A, Adult B(大人A、大人B)という表現ですね。
家で一緒に暮らす人とのことばといった感じでしょうか・・・。
でも、そのことばが複数だった場合なんかは、もっとわからなくなってしまいます・・・。
バイリンガルの母語
中島先生はバイリンガルについて考える場合、
母語を子どもが出会う
- 初めてのことば
- 土台になることば
- ベースになることば
という意味で使っています。
ただ、産まれた時から複数の言語に触れているバイリンガル(同時発達バイリンガル )は、
”母語が2つ以上で成り立っているので、どちらが母語であるか決めることは難しい” そうです。
(同時発達バイリンガルについては、前に少し書いてみています↓)
例えば、お母さんとお父さんで話す言語が違う場合などは、母語が何であるかちょっと難しいと思います。
うちの場合も、日本語・韓国語・(英語)に赤ちゃんの時からふれているので、どれが母語であるのかちょっと難しいです💦
ただ、今のところ、自分で1番自由に使えることばは、日本語のようで、
「英語と韓国語はちょっと難しいの・・・」
といったことがあるので、母語を「土台となることば」として考えるなら、日本語が1番母語に近いのかなと思っています。 でも、韓国語も母語と考えてもおかしくありません。毎日お父さんとふれてきて、話してきたんですからね。
なので、私は、勝手に日本語は母語・韓国語は父語と言ってます😅。
中島先生も、あるバイリンガルのお子さんに 「母語って何?」と聞いたところ、 「母語はーー、父語はーー」 と答える子どもがいたというエピソードがあります😅。
それぞれの家庭のことばの使用環境や状況によって、母語は異なるかと思います。
お子さんが初めて出会い、土台となっていることばが母語(or母語に近いもの)と考えるといいですね。
母語と継承語の関係
オーストラリアに住んでいると、学校に入るまでは、家のことば=親のことば=母語を使って生活していきますが、学校が始まると、英語を使って生活する時間が多くなります。
そうこうするうちに、英語の方が強いことばとなっていきます。
そうなってくると、
私の日本語とチビの日本語は少し異なるものになっていきます・・・。
私は今でも日本語を使ったり、日本語で考えたり、全て日本語です!
(もっと、英語勉強しろ〜ですが😅!)、
チビはおそらく今後日本語を使ったり、日本語で考える機会が減っていきます。
今も時々一人遊びで英語を使うことがあるくらいだから、この先英語を使って、英語で考えることが増えていくんだろうな・・・という未来予想図がもはや見え隠れしています・・・。
今は、チビの日本語(韓国語)はなんとか母語ですが、これから先、母語というのがちょっと難しい状況に・・・。
韓国語も、どうなってしまうんでしょう😨・・・・。
父親と韓国のバラエティ見て一緒にゲラゲラ笑ってるのを見たいぞ・・・韓国のばあちゃんとも楽しく話しているのを見たい!って思ってる、私・・・。
学校に行き始めたら、もろくはかないものになってしまいそうですね・・・。
言語学の世界では、家のことば(日本語や韓国語)と現地のことば(英語)の関係が変わってきたときに、
日本語や韓国語を親から受け継いだ「継承語」として区別しています。
なるほど・・・。
継承語は母語から変化したものであることがわかります。
今はまだチビの日本語は、母語と継承語の瀬戸際!といったところでしょうか・・・。
境界線は人によってまちまちだし、色々・・・。でも、明らかに日本で生まれ育った人たちにとっての日本語は違います。
母語の役割
母語が、「土台となることば」であるのであれば、母語が果たす役割は少なくないように思います。
中島先生は母語の役割を以下の6点にまとめています。
- 母語は社会性の発達に伴って周囲の人々との交流のために、初めて使うことば
- 母語は感情や意志を伝えるために子供が初めて使うことばであり、子どもの情緒安定のために必要なもの
- 母語は知能の発達に伴って考える道具として子どもが初めて使うことば
- 母語は親のことば。親が親子の交流に使うことばであり、親子の絆の土台となるもの
- 母語は親の母文化(行動規範、価値観、感じ方)に裏付けられたことばであり、子供が身につける初めての文化
- 母語は親が作り出す家庭の一員として受け入れてもらうために覚えるものであり、「うちの子」としてのアイデンティティを伴ったことば
母語の役割から見るチビの様子
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情緒安定のために必要なもの・・・
なんとなく、これは感じることがあります・・・。たまに、英語や韓国語で言いたいのに、言えない時の顔・・・ ストレス感じてるなあって思うことがあります。
一時期、チャイルドケアに行っていた時は、夜泣きもありました。ことばが自由に使えないことによるストレス・・・が大きかったと思います。
「自由に使えることば」の存在は不可欠です。
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知能と母語の発達
17歳の知能を100とすると、その
20%は1歳まで
50%は4歳まで
80%は8歳まで
92%は13歳まで
に伸びるそうです。
え、もう、うちは5歳だから半分以上・・・・?!なんだか焦る。
知能の発達と母語の発達は切り離せない関係ですよね・・・。
最初は、日本語なのか、韓国語なのか、わからない発語から始まり、それぞれを使い分けて話すようになり、単語からフレーズ、そして文に進化していくのは、まさに知能と母語の両方の発達がないと無理だって思うからです。
そして、4歳でもう半分は知能が出来上がっていると考えると、8歳の知能80%到達に向けて、まだまだ母語も発達していくんだと思います。
最近は、「内緒」って何?ときかれ、「秘密ってことだよ」と伝えたら、
「内緒 秘密 内緒 秘密・・・・・」
と言う具合に、繰り返しながら考え込んでいました。
難しいことばを知るようになってきて、
目で見て分かるものではないことばについて、考えるようになってきたなって思います。
ことばって大きな存在ですね・・・。
もし、ことばの力が不十分だったら、「考える」という行為(知能)に支障をきたすでしょう。
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親子の絆の土台
絆と聞くと、日本語や韓国語が、私たち親と子どもをつないでくれているように思います。 お父さんと二人でコソコソ話をしている時なんか、楽しそうです😊
でも、親同士は英語で会話しているんだから、みんなで英語で話した方が家族の絆になるのかな・・・って思う時もあります・・・どうなんだろう・・・。親子の絆と家族の絆は違うものなのでしょうか・・・?!
特に、食事の時間は、ちょっと難しい時もあります。家族団らんの時間ですが、英語と日本語と韓国語が飛び交っていますから・・・・。どうやって、3人のことばを考えていけばいいのかは、これからの課題です・・・。 そのうち、チビに、「英語でいいじゃん!」って言われないか心配・・・😨。
でも、やっぱり、私は、自分の「自由に使えることば」でチビとコミュニケーションしたいなって思いますけどね😅。
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アイデンティティを伴ったことば
アイデンティティとなると、5歳になったばかりなので、ちょっとまだよくわかりませんが、
本人は、
「オーストラリア人?日本人?韓国人?わかんない。」
って言っていました。実際は、オーストラリア人ではないんですが。
(チビの国籍は、日本と韓国。)
チビのアイデンティティはどうなっていくのか、今後アイデンティティについては見守っていきたいと思います。
まとめ
母語の定義と継承語との関係、そしてその役割について考えてきました。
実際のチビの様子と照らし合わせると、母語の役割の大きさも実感できます。
そして、
チビのことばと知能の発達と切っても切り離せないものが、母語だったり、
母語が親子の絆の土台となってくれるものであったり、
情緒安定の下支えもしてくれるものであることに気づかされました。
今後、英語のシャワーが始まっても、英語を無理強いすることは逆にマイナスになりそうです。むしろ、親子の絆のためにも、情緒安定のためにも、家では、日本語(韓国語)を使っていきたいという気持ちが強くなりました。
英語が強いことばになっていく過程で、チビのことば全体の力をどう発達させていくことができるのか、見極めながら、サポートしていけるといいなと思いました!
奥が深くて、単純ではないバイリンガル子育てですが、コツコツやっていきたいですね。
バイリンガル子育て中のママさん一緒に頑張りましょう〜!!!!
以上、長くなってしまいました・・・。まとまりもあるんだかないんだか・・・。
ことばって面白いなと思う今日この頃でした!
今日もありがとうございました!
参考文献